専業主夫の休業損害
横浜地裁 平成26年2月28日判決
自保ジャーナル1924号
今回は、実母介護の事情により退職した、「専業主夫」の原告の休業損害を、主婦としての休業損害計算に準じて算定した判例をご紹介します。
原告(夫・男性)は、自転車を押して、横断歩道を通行中、被告運転の普通貨物車に衝突され、頚椎捻挫等による自賠責14級9号の後遺障害が認定されました。原告は、実母を介護する必要性がああり、退職の上家事に従事していました。また、配偶者は派遣社員として勤務していました。ただ、原告は求職活動をしているという事情もありました。
裁判所は、「今日の社会では、夫婦の経済生活のあり方は多種多様であり、妻が就労して賃金を得ることで経済基盤を支え、夫が「専業主夫」として家事に専念する形態もあり得ることであるから、「専業主夫」が交通事故により家事労働が不可能ないし困難になった場合には、その損害を休業損害として請求できるというべきである」として、原告の事故前まで行っていた家事を具体的に検討した上で、「専業主夫」として主婦と同視できる程度の家事労働に従事していたと判断しました。
その上で、原告の休業損害の算定にあたっては、女子学歴計の賃金センサスに従って、治療期間の平均的労働能力喪失率を4割と認定して、計算を行いました。
本裁判例では、主夫であっても、主婦の休業損害に準じて休業損害等の計算がなされることが、確認されました。この判断は当然のものといえるでしょう。ただ、判決中でも述べられているとおり、今日の社会では、夫婦の経済生活のあり方は多様であり、共働きであったり、家事を分担していたりする場合があります。そのような場合、主婦としての休業損害を主張するためには、具体的に行っている家事と、事故が家事に与えている影響を丁寧に主張立証する必要があります。
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