後遺障害1級の将来介護費(施設入所費)
広島高裁岡山支部 平成27年4月23日判決
自保ジャーナル1952号
今回紹介する裁判例は、交通事故により1級1号の後遺障害(遷延性意識障害・四肢麻痺)を負った33歳男性の被害者について、平均余命まで月額20万円の将来介護費(施設入所費)を認定した事例です。
被害者側は、施設に入所してから6ヶ月の費用が約385万円であったことから、1年間にかかる入所費用がその倍額であり、平均余命まで同額がかかると計算し、約1億3,800万円を請求していました。
第1審裁判所(岡山地方裁判所)も、概ね被害者側の主張を採用し、約1億2、400万円の将来介護費(入所費用)を認容していました。
しかし、広島高裁岡山支部は以下のように判断し、将来介護費(入所費用)を約3,300万円と判断しました。
まず、被害者側が主張する入所費用については、一部に家賃や食費が含まれており、「本件事故による遷延性意識障害、四肢麻痺という後遺障害が残存しなくても、必要となる生活費である」として、全額を傷害介護費として認定することはできないとしました。
また、その上で、被害者が障害者総合支援法によって、入所費の一部の支払いを免除されており、今後1年間については多額の負担が生じる可能性はないことや法改正によって入所費の本人負担額が増額する可能性があること等を考慮し、月額20万円(年額240万円)の将来介護費(入所費用)が相当と判断しました。
なお、加害者側の「将来介護費については定期金賠償(1度ですべての賠償金を支払うのではなく、1年にいくらなどと決めて定期的に賠償金を支払う方式)によるべき」との主張については、退けられています。
重度の後遺障害が残存した場合、将来介護費をどのように算定すべきかという点は、大きな争点となります。被害者にとっては、今後の生活を支える重要な費用であり、自宅介護を選択するのか、施設介護を選択するのかという点を含め、十分な検討が必要です。
※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。