2018/04/25 更新その他

左足関節機能障害等の自賠責併合11級認定を受ける88歳女子の自宅前階段改修費は本件事故と相当因果関係が認められると認定された裁判例

東京地裁 平成29年9月1日判決

自保ジャーナル2010号

今回は、事故により左足関節機能障害等の後遺障害が残存する被害者について、自宅前の階段自体の改修・手すりの設置工事費用の請求が認められた裁判例をご紹介します。

80代の女性が青信号交差点横断歩道を歩いていたところ、加害者の貨物車に右折しながら衝突されたという事故です。

被害者は、本件事故により、左腓骨遠位端骨折、右脛骨高原骨折等の傷害を負い、入院及び治療を継続しましたが、右膝痛、左踵部痛、左足関節機能障害等などの後遺症が残存しました。

本件で争点となった事項は入院期間(入院の必要性・相当性)や付添人交通費などいくつかありますが、ここでは、自宅前の階段改修費に関する判断についてご説明します。

被害者は、本件事故による左足関節及び右膝関節の可動域制限が残存したことにより、足を18cm程度しか上げることができなくなったと主張し、自宅前の階段について、最大20cmあった段差を減少させるとともに手すり等を設置するなどしました。被害者は、これらの工事費用を、事故と相当因果関係があるとして請求しました。

これに対し、裁判所は、およそ被害者の主張のとおりに認めました。被害者の自宅前階段等の改修工事費用等に関して、裁判所は、被害者の事故後の状況、自宅の状況等を具体的に認定したうえ、概ね次のような判断をしました。

  • 被害者は、本件事故による右膝関節・左足関節の可動域制限にため、階段昇降の際にはT字杖を用いるほか二足一段の方法を取っていたこと、
  • 家屋調査の際、被害者が実際に本件階段や本件段差の昇降を行うなどした上で、自宅改修の必要性を調査していると認められるところ、その結果作成された報告書に、
    (a)本件階段について、縁石部分の踏み面が狭く約20cm高い段差があること、
    (b)本件段差に約19㎝の段差があることがそれぞれ記載されていることに照らすと、本件階段の両側端及び本件段差の付近に、手すりを設置する必要性があると認められる。

    ・・・本件階段の形状に照らすと、・・・本件階段全体を回収する必要があると認められる。
    被害者の受傷の内容、後遺症の程度・内容を具体的に検討し、浴室・便所・出入り口等の家屋や自動車の改造の必要性が認められる場合には、相当額を損害として請求できることがあります。

弁護士のコメント

家屋・自動車等改造費は賠償額が高額になりやすいので、裁判で争いになりやすい損害費目です。後遺障害の具体的な内容や、被害者の家屋や自動車の状況等の事情によって賠償額に大きな差が出るため、慎重に検討する必要があります。

後遺障害のために従前の家屋からやむなく転居したため生じた転居費用や、転居したために生じた家賃の差額等の請求が認められることもあります。

本件は、右膝関節・左足関節の可動域制限が残存していた事案であり、被害者の後遺障害の内容、程度や、生活状況、自宅の状況等の諸事情から、自宅前階段の改修の必要性を認めています。

(文責:弁護士 大友 竜亮

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。