2018/09/06 更新過失相殺

バイク事故について、ハーフヘルメット着用による損害の拡大を否認した事例

京都地裁 平成30年1月11日判決

自保ジャーナル2020号

今回とりあげる裁判例は、交差点をバイクで直進中、右方から貨物自動車に衝突され、急性硬膜下血種等から遷延性意識障害を負った被害者に関するものです。

本件で特徴的なのは、加害者(保険会社)側が「被害者の着用していたハーフ型ヘルメットは頭頂部付近しか保護できていない」「被害者には頭部全体を保護するフルフェイス型ヘルメットを着用する義務があった」と主張したことです。

被害者はこれまで既往症から脳外科手術を受けており、側頭部頭蓋骨が人工骨によって覆われている状況でした。そのため、人工骨と本来の側頭部頭蓋骨との間に連続性がなく、側頭部頭蓋骨が脆弱であったという事情がありました。

これに対して裁判所は 「側頭部頭蓋骨の脆弱性の有無を問わず、本件事故によって被害者に傷害が生じた可能性は否定できない」
「側頭部頭蓋骨の脆弱性が損害を拡大させたとまではいえない」
「被害者が医師から側頭部頭蓋骨の脆弱性を指摘されていたような事情はない」 と認定して「フルフェイス型ヘルメットを着用する義務があったとまでは認められない」と判断しました。

もちろん、本件は被害者の方が事故前に脳外科手術を受けていたという特殊性がありますが、いずれにしても、フルフェイス型ヘルメットの方が被害を軽減させる可能性は高いでしょう。
ヘルメットやプロテクターなど、適切な装備でバイクに乗られることをお勧めします。

(文責:弁護士 川﨑 翔

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。