2019/02/13 更新高次脳機能障害

46歳女子の自賠責3級認定高次脳機能障害を入浴自体は1人で行っている等から5級認定し、日額3000円で将来介護費を認めた事例

大阪地裁 平成30年6月28日判決

自保ジャーナル2029号

今回は、高次脳機能障害(5級2号)が認定された46歳女子の将来介護費用を、日額3000円で認めた裁判例について解説します。(本件の争点は多岐に渡りますが、今回は将来介護費用の問題に絞って解説します。)

本件では、事故当時46歳の女子(原告)が、原付バイクで走行中に被告大型貨物車に衝突され、頭部外傷Ⅲ型、外傷性くも膜下出血、下腿骨骨折等の傷害を負いました。訴訟の結果、高次脳機能障害(5級2号)や下肢の機能障害(10級11号)等が認定され、併合4級後遺障害となりました。

本件訴訟では、事故態様と過失割合、後遺障害の程度、損益相殺、将来介護費などが争点となり、将来介護費について、裁判所は次のような判断をしました。

「現在は、原告の夫、娘及び実母が見守る中、自宅で生活をしている。食事は家族が準備をすれば自ら取ることはでき、排せつは1人で可能である。入浴は、家族がシャワーチェア等を準備し、入浴自体は1人で行っている。ただし、身体的な障害があることから、転倒のおそれが大きく、室内移動や入浴の際は、家族が見守っている。」「原告の後遺障害の程度及び現在の生活状況に照らせば、原告に対しては随時介護の必要性があると認められ、食事、排せつ、入浴等は自立していることを踏まえれば、将来介護費の日額は3000円が相当と認める。介護を必要とする期間は、平均余命期間である37年間(ライプニッツ係数は16.7112)である。」

結論として、将来介護費として、1829万8764円が認められました。

【コメント】

一般的に、将来介護費用は、医師の指示または症状の程度により必要があれば被害者本人の損害として認められ、職業付添人は実費全額、近親者付添人は1日につき8000円が認められることが多いとされています。

将来介護費が認められる後遺障害としては、基本的には、脊髄損傷、遷延性意識障害、(重度の)高次脳機能障害といった、後遺障害1級や2級に該当する重度の後遺障害であると言われていますが、後遺障害3級以下であっても、認められることがあります。特に、高次脳機能障害では、「見守りが必要」という理由から、将来介護費用が認められるケースが多くあります。

本件においても、被害者はある程度自立した生活ができ、高次脳機能障害5級と認定されていますが、転倒のおそれがあり、家族が見守りをしていることが重視されて、将来介護費が認められたと考えられます。

特に、高次脳機能障害における将来介護費については、後遺障害の等級だけでなく、具体的にどのくらい“見守り”の必要があるのかが重要な判断要素になってきます。

(文責:弁護士 前田 徹

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。