2015/08/04 更新後遺障害

後遺障害の労働能力喪失率と慰謝料

札幌地裁 平成27年2月27日判決

自保ジャーナル1945号

今回は、後遺障害に基づく逸失利益(労働能力喪失率)と慰謝料について、被害者の具体的な状況を加味して大幅に増額した裁判例をご紹介します。

被害者は、横断歩道を通行中、乗用車に衝突され、骨盤骨折等の傷害を負いました。そして、10ヶ月通院した結果、腰仙部痛・右手関節痛から自賠責併合14級の後遺障害が認定されました。

裁判所は、「当該被害者の職業能力的諸条件を具体的に検討した上で労働能力喪失率を判断する必要がある。その検討の結果として、自賠責保険の後遺障害の一般的な労働能力喪失率と一致する場合も多いであろうが、この一般的な労働能力喪失率を形式的、画一的に適用すべきものではない」としました。そして、被害者の収入の減収の程度や、他の職業で事故前と同等の収入を得ることは難しいといった事情を考慮して、(被害者)60歳主婦ダンス教室・インストラクターの14級後遺障害逸失利益を、労働能力喪失率50%を基礎として判断しました。

また、14級後遺障害の慰謝料として、「ダンスインストラクターを前提とした労働能力喪失率の程度、原告(被害者)が長年携わってきたダンスのインストラクターとして稼動できなくなり、他の仕事で相当の苦労を余儀なくされること等本件における一切の事情を考慮し」て後遺症慰謝料400万円を認定しました。

本件裁判における、逸失利益(労働能力喪失率)や後遺障害慰謝料は、被害者の具体的な状況を加味して、通常の事例よりも大幅に被害者に有利な認定がされました。被害者としては、後遺障害による痛みが仕事にどのような影響をもたらすのか、後遺障害や仕事上の不利益がもたらす精神的なダメージはどのようなものであるのか、といった点を具体的に主張立証する事が重要です。

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。